今回は、小説「新世界より」を紹介します。

「新世界より」ってどんな小説?
「新世界より」とは、貴志祐介さんによる、長編SFファンタジー小説です。
第29回日本SF大賞を受賞しています。
貴志祐介さん は、映画化もされている小説「悪の教典」の作者としても有名な方ですね。
「新世界より」 は、現在、 単行本は全2巻、新書版は全1巻、文庫版は全3巻で発売されてます。
さらに、漫画版もあったり、アニメ化もしていたりと、人気の作品です!
まずは、簡単に内容を紹介します。
簡単な内容紹介
舞台は 1000年後の日本 。ですが、そこは科学技術の発達した世界ではなく、むしろ時代を逆行したような、古い時代の日本のような世界観です。
しかし、 ある一点が明確に異なります。
それは、人が呪術という超能力を使う、という点です。
それを使って争わないように、人々には攻撃抑制と愧死(きし)機構が遺伝子に組み込まれています。
攻撃抑制とは、同族を攻撃しないための精神的制約であり、愧死機構については引用します。
愧死機構(きしきこう)
人間の遺伝子に組み込まれた強制的かつ強力な攻撃抑制機能。サイコキネシスを持った人間が、集団で社会生活を営むために必要不可欠なものとされている。同種である人間への攻撃を企てていると脳が認識すると、無意識にサイコキネシスが発動。腎臓および副甲状腺の機能を停止させる。これによって不安、動悸、発汗などの警告発作が起き、なおも攻撃を続行した場合、低カルシウム血しょうによる発作で窒息死するか、カリウム濃度の急増により心停止に至る。
そして、舞台である集落、神栖66町では、人々はバケネズミという生物を使役し、生活しています。
バケネズミ
ハダカデバネズミから進化したとされる生物で、知能は高く、中には人語を理解し、しゃべれる個体も存在する。身長はおおむね120~140cm程度だが、個体によっては子供の背丈を上回る体躯を持つ者もいる。呪力を持つ人間を”神”と崇めており、その命令には絶対服従の意思を示す。普段は、八丁標の外に点在するコロニーと呼ばれる”巣”で生活しているが、土木工事などの役務を命じられた際には、町に入ることも許されている。また、人間に忠実なバケネズミには、額にコロニー名を記した刺青が施されている。
そこで暮らしている少女、渡辺早季は、様々な経験をしていく中で真実を知っていくことになります。
子供のころから教えられてきた規則、噂、昔話には隠された秘密があったのです。
読んだ感想
徹夜して、一気に読み終えましたよ、おもしろすぎて。
簡単に内容を上で紹介しましたが、その世界観がかなり緻密です。
正直、最初はちょっと読み辛いです。というのも、世界観が緻密すぎて、序盤はその説明が多くなってしまっているからなんですよね。
しかし、そこを乗り越えれば、読めば読むほど面白くなってきます!
この小説はある程度分量はあるのですが、面白くて、分量なんて全く気になりませんでした。
どうして人が呪術(超能力)を使えるようになったのか、どのようにしてそのような世界になったのか
昔話にでてくる悪鬼・業魔とは何なのか
その答えは割と早い段階で知ることができます。が、それのみならず、
その世界のシステムには、全て合理的な理由があることが判明してきます。
そう、全てに理由があるんです。
この世界には学校があったり、奇妙な生き物がいたり、謎の儀式をしたり、物語途中で恋愛要素が入ってきたりしますが、全てなるべくしてなったものなんです。
この物語を通してもっと様々な要素がありますが、それもこの世界観のスパイスでしかありません。
そして、最後には衝撃の事実が暴かれます。
もう鳥肌がたちましたよ。 虚を突かれました。
こういったものに有りがちな「核戦争後の世界でしたー」みたいな、陳腐なものではありません。
その内容は、ぜひ、本を手に取って自分の目で確かめて下さい!
ちょっと追記
あと、この小説、読んでて凄くノスタルジックな感じがするんですよね。
自分が日本の地方出身というのもあるのかもしれませんが、 小説の舞台の神栖66町では、夕方になるとあるチャイムが鳴ります。
自分の住んでるところでは「夕焼け小焼け」が夕方に流れるのですが、そんな感じで、
神栖66町では「家路」が流れる描写があります。
知っている方ならわかると思いますが、 ドヴォルザークの交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」第2楽章と同じ曲なんですよね。その違いは歌詞の有無だけです。
ドヴォルザークは チェコ国民楽派の音楽家なので、当然といえば当然なのですが、ノスタルジックな曲が多く作られています。
ドヴォルザークのいう新世界とはアメリカのことですが、新しい世界と言いながらノスタルジックな音楽というのは正に、今の私たちからすれば時間軸と世界観の矛盾が生じているこの小説の世界観にはぴったりだと思います。
なので、きっと貴志祐介さんもタイトルを「新世界より」にしたのでしょうね。
こちらが ドヴォルザークの交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」第2楽章 です。
アニメもおすすめ

上でアニメ化されていると言いましたが、アニメもおすすめです!
その緻密な世界観故か、この小説は映像不可能とまで言われていたそうです。
が、しかし、アニメ化されました。
よりはっきり世界観をイメージできるので、小説を挫折した方にも、もう読んでしまった方にも、おすすめできます。
どうしても小説と比べたら情報量が落ちたり、一部作画崩壊しているという声もありますが、
アニメファンからは概ね良い評価を受けていますし、自分も楽しめたので大きな問題は無いと思います。
個人的なイチ押しポイントは、音楽です。
作中に「陰の伝承歌」というBGMが流れるのですが、それが正にこの作品にぴったりで。
世界観を説明しろと言われたら、言葉で説明するよりも、いっそ 「陰の伝承歌」 を聞かせたほうが早いんじゃないかってくらい世界観に合っている曲です。
是非、皆さんに聞いてほしいと思います!
最後に
「新世界より」は、個人的に読んできた小説の中でトップレベルに面白いと思っています。
面白い、には様々な意味の面白いが含まれていますが、 「新世界より」の場合、そのSFファンタジーという世界観、未知が明かされていくミステリー、ハラハラするような展開、変わりゆく人間関係と、たくさんの要素が詰まっています。
なので、社会人の方、学生、SFファンタジー好き問わず、万人に楽しめる小説だと思います。
ただ、この小説は一気読みに向いているので、時間が有る時に、腰を落ち着かせてから読むと、さらに楽しめると思います!
このブログを読んで、「新世界より」を読んで下さったらうれしいです。
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